【ロッカペラからPTXまで】海外の人気アカペラバンドをもっと知ってほしいのです

「アカペラ」と言われると、どんな音楽をイメージするだろうか。教会ゴスペル?ドゥ・ワップ?黒人のR&Bコーラスグループ?地元の祭りで歌ってるサークル?

今回は、バンドというスタイルでアカペラをやっている「アカペラバンド」にフォーカスする。その先駆者から昨今の人気アーティストまで、海外の有名アカペラバンドを5つ紹介していきたい。海外のアカペラバンドは、本当にすごいのだ。おそらく想像を上回ると思うので、ぜひ読んで聴いていってほしい。

目次

  • アカペラバンドって?
  • 日本大好き!米アカペラ界の重鎮「Rockapella」
  • テクニカルなジャズアカペラ「The Real Group」
  • ロックの領域に侵攻した「The House Jacks」
  • アカペラのイメージを変えたビートサウンド「Naturally 7」
  • アレンジ力が武器の名曲メーカー「Pentatonix」
  • 常に進化する海外アカペラに注目すべし

アカペラバンドって?

アカペラの起源と変遷

元来教会音楽の様式を示す言葉だった「アカペラ」は、音楽の発展に伴って様々なジャンルに取り入れられ始め、現在では一般に無伴奏音楽のことを示す用語となった。ポピュラー音楽におけるアカペラは、単なる「無伴奏の歌」に留まらず、ベース&パーカッションなどのリズム隊を取り入れた「アカペラバンド」形式で発展し続けている。

海外のアカペラバンドがすごい

リード・ヴォーカル、コーラス、ベース、パーカッションから成るいわゆる「アカペラバンド」と呼ばれる演奏形態が、日本において世間的に広く認知され始めたのは最近のことだ。

2002年頃、フジテレビのバラエティ番組でアカペラが「ハモネプ」という企画名で取り扱われ始めたことがそのきっかけだろう。「ハモネプ」はざっくり言ってしまえば「若者向け音楽甲子園」の一種で、プロの卓越した技術を楽しむムーブメントではなかった。

その番組でアメリカのプロ・ヴォーカル・グループ「m-pact」がゲストパフォーマンスを行った時、「え…本場のアカペラってこんなやばいの?」と度肝を抜かれた視聴者は多かったはずだ。

参考までに、m-pactのナンバーを1曲聴いていただきたい。

ここまできたらはっきり言おう。海外のプロアカペラバンドは、レベルが違う。もうなんか自分たちとは違う生き物なんだなと認めなければやってられないぐらい、すごい。

海外のアカペラバンドをあまり聴いたことがない人がいたら、絶対に聴いておいてほしいメジャーどころの5アーティストを紹介していこう。

日本大好き!米アカペラ界の重鎮「Rockapella」

「アカペラバンド」の創始者

1986年に結成されたアメリカのグループ「Rockapella(ロッカペラ)」は、バンドスタイル・アカペラの創始者の一つだ。

As one of the progenitors of the astonishing full-band sound of “contemporary” a cappella,

引用元:Rockapella公式HP

公式HPでも、「ロッカペラは、『なにこれすげー!』ってなるフルバンド・サウンドの現代アカペラの先駆者だから!」(超意訳)といったような紹介がされている。

ロッカペラは、「声」を愛し、「声」できる音楽の可能性を追求してアカペラの道を突き進んだ。メンバーのScott Leanardは、公式HPにこんな言葉を綴っている。

The best musical instrument of all is the human voice – if you've seen Rockapella you know that's the truth.

引用元:Rockapella公式HP

「あらゆる楽器のうち、最高の楽器は人間の声なんだ。ロッカペラを観てもらえれば、それが真実だと分かるよ。」

見せてもらおう。

王道感と新しさの両立

シンプルな字ハモ(歌詞ハモリ)、メロディとオブリの1対1の絡み合い、ぐいぐい主役のポジションに出てくるベース、陽の雰囲気。これぞスタンダードなコンテンポラリーアカペラだ。そして、サビ(0:45~)の晴天に突き抜けるような抜け感こそロッカペラ・サウンド。

コーラスは一曲通してほぼ字ハモという、シンプルな5本のサウンド。難解なことは何もしていないのに、この途切れない音の厚み。何?こわい。あと、Scottに抱えられてリズムのまま為されるがままな犬、かわいすぎない?

ちなみにこの「Bounce Back」、公開は2017年だ。ロッカペラのサウンドは「古き良き」でありながら決して古びることはなく、彼らは今もなおリアルタイムで最高峰に立つ実力であることが分かる。

ロッカペラらしさは崩さないまま、こんな重くて激しい音も作る。すごい重厚感なのにパフォーマンスは相変わらず陽でコミカルなところが、ロッカペラらしくて大好きだ。

日本が大好き

ロッカペラは日本を愛してくれている。

アメリカでのライブが多いが、海外でのライブも多数行っており、日本にもほぼ毎年来日している。

引用元:Wikipedia

1992年のアルバム「One・To N.Y.」は、日本のために作られた日本三昧のアルバムだ。山下達郎の「RIDE ON TIME」やバブルガムブラザーズの「Won’t Be Long」など11曲のJ-POPを、原曲のイメージにとらわれない斬新なアレンジでカバーしている。斬新だが、原曲へのリスペクトもしっかり感じる仕上がりになっている。

アルバムのラストには、「日本のここが好き!」を詰め込んだオリジナル曲「Tokyo Yo Yo」が収録された。日本人が今や気付きもしない日本の魅力を、ロッカペラらしい明るいオープンマインドな空気感で歌ってくれているこの曲を聴くと、なんだか今でも泣けてくる。

受け継がれる「Rockapella」という音楽

悲しいことにロッカペラ、度重なるメンバーチェンジによって創始メンバーはすでに一人も残っていない(現存メンバーのうち一番キャリアが長いのが、1991年に加入したScott Leanard)。久々に公式HPを覗いた先日、ほぼ誰?状態で少し切なかった。

だが、音楽性やサウンド感は昔から変わっていない。ロッカペラは、メンバーが変わっても「ロッカペラ」であり続けてくれている。

テクニカルなジャズアカペラ「The Real Group」

音楽エリートがアカペラ界に

1984年、スウェーデン王立音楽アカデミーで音楽を学んだ5人の男女が結成したのが、アカペラバンド創成期の一員でもある「The Real Group(ザ・リアル・グループ)」だ。リアルグループは、ジャズを中心としたテクニカルで大人びた音楽を奏でる。ロッカペラのポップさとは異なる独特な雰囲気を味わってほしい。

ジャジーなハーモニーから醸し出されるアダルトな雰囲気もさることながら、使うテクニックのバリエーションの多さにも耳を惹かれる。1番と2番に同じアレンジは最低限しか適用しないという意地を感じる。リスナーにはもちろん、歌う側にとっても飽きないアレンジにこだわるアレンジャー、個人的には大好きだ。

ジャズらしいジャズナンバーを歌っても、しっかりジャズっている。スウィングやシンコペーションを多用し、演者によってリズムの解釈が異なりやすいジャズで、声を合わせて一つの音楽を歌い上げる難しさ…をリアルグループは微塵も感じさせない。

「The Real Group」も受け継がれていく…

結成から22年が経った2006年から、2010、2015、2016年と立て続けにオリジナルメンバーがグループから「卒業」し、2017年現在、結成時からのメンバーはヴォーカル・パーカッションのAnders Edenrothのみとなった。ロッカペラ同様、公式HPを見た私は「ほぼ誰ノスタルジー」に陥った。20年ともに歌ってきた仲間の背中を見送り続けたAnders、どんな気持ちだったのだろう。

いや、きっと切ないながらも前向きな気持ちだったはず。リアルグループの音楽を聴けば、どのメンバーの時代でも「The Real Group」という観念はきちんと前向きな姿勢で守られ続けているのを感じられるから。

ロックの領域に侵攻した「The House Jacks」

「楽器を持たないロックバンド」の登場

1990年代に入ると、一部のアカペラバンドは「声が演れる限界」に挑み始める。1991年にアメリカで結成された「The House Jacks(ザ・ハウス・ジャックス)」がその台頭だ。

The House Jacks describe themselves as a "rock band without instruments" their live shows typically include not only singing but also vocally imitating instruments such as trumpets, guitars, harmonicas and strings

引用元:Wikipedia

ハウスジャックスは自らを「楽器を持たないロックバンド」と表現し、トランペットやギター、ハーモニカ、ストリングスなどの楽器の音色を声で表現することに挑戦した。2010年のアルバム「LEVEL」のダイジェストだ。

信じられないと思うが、全曲きちんと「声」で作られている。ハウスジャックスがアカペラバンドだと知っている私も「あれ、この人たちってアカペラバンドだったよね…?」と疑ってしまい、30分くらい「ハウスジャックス 本当にアカペラ」とかでググってしまった。

CD音源はミキシングによって成立するサウンド作品というテイストになっているが、ライブでも彼らの声によるイミテーション・インストゥルメンタルはきちんとパフォーマンスに取り入れられている。

トランペットなんて凄すぎる。映像の中にトランペットを構えている奴がいないか探してしまった。

声の可能性を突き詰めた先にあるもの

上記で紹介した「LEVEL」のダイジェスト動画なんて、言われなければアカペラだと気付かない。「声感」が好きでアカペラを愛好しているリスナーがハウスジャックスを好んで聴くかどうか、意見は分かれそうだ。

Combining their virtuosic harmonies with spectacular stagecraft, these five world-class performers continue to push the boundaries of the human voice, thrilling audiences around the world.

引用元:The House Jacks公式HP

「この5人の世界的パフォーマーが、人間の声の境界線を押し広げ続けている。」

ハウスジャックスは声で演れる限界に向かって突き進み、もはや素人には聴き分けられないほど楽器に近付いてきた。そろそろ人間辞めるんじゃないかと思うレベルで。

でも、逆かもしれない。

様々な楽器が発明され、楽器要らずのEDMが流行り、人の声を模倣してしまうソフトウェアまで現れた。そんな時代の潮流に逆らうように、「全部人間の声でできるで!」と見せつけてくれるハウスジャックス。彼らの音楽はある意味で、人間という存在の再定義と、その価値の再確認を試み続けているようにも感じられる。

アカペラのイメージを変えたビートサウンド「Naturally 7」

「プレイするヴォーカル」でイメージを打破

アメリカで1999年に結成された「Naturally 7(ナチュラリーセブン)」も一種の人間離れ系アカペラバンドだが、「ヴォーカル・プレイ」と称された彼らのパフォーマンスはハウスジャックスよりも「アカペラらしさ」において洗練されている。ハウスジャックスが「これ本当にアカペラ?」というベクトルのサプライズを提供してくれるのに対して、ナチュラリー7に対する驚きは「何このアカペラすごい!」といった感じだ。

ポピュラー・アカペラの原点である古き良きドゥ・ワップの映像を消して自分たちのプレイを始める演出がファンキーだ。

アカペラといえば、みんなでハモるバラードとか、ドゥ・ワップ調のコーラスでポップに歌う感じとか、そういう日本におけるアカペラに対する固定的なイメージをナチュラリー7がぶち壊してくれた。アカペラはこんなにクールになるんだ、と。

ブラック・ミュージックとバンドスタイル・アカペラの融合

ナチュラリー7のサウンドがアカペラのイメージを打破したのは、複数人でプレイするヒューマンビートボックスやその他の楽器を模した声で音の多様性を見せつけたことと併せて、彼らのサウンドがブラック・ミュージックの深みを持っていることに起因するのではないだろうか。

とてもじゃないが「アカペラのバラード」という感覚で聴くにはあまりにヘビーでドラマチックすぎるこの最強バラードも、完全に安心して身を委ねられるブラック感をまとっている。(どんどん迫力を増しながら展開していくのでどうか最後まで聴いてほしい。)

アレンジ力が武器の名曲メーカー「Pentatonix」

スタンダードの魅力に回帰

2011年に結成された、アメリカの有名アカペラ番組「The Sing Off」出身の「Pentatonix(ペンタトニックス)」の人気が今猛烈だ。ペンタトニックスメンバーの魅力については先日こちらの記事で紹介させてもらったばかり。

ここに来て、アカペラ人気はスタンダードの魅力を再確認するフェーズに来たように思える。ペンタトニックスは3人のVo.&Cho.と、ベース、ヒューマンビートボックスで構成されるシンプルな5人バンドだ。彼らの音楽は、スタンダード・アカペラのサウンド感と、洗練されたコンテンポラリーさを兼ね備えている

リスペクトに起因するアレンジセンス

ペンタトニックスが歌うカバーナンバーは、原曲へのリスペクトと愛に溢れている。

11世紀から現代に至る音楽の歴史を総なめするカバーメドレーに、ペンタトックスの音楽に対するリスペクトと、音楽愛がなければ持ち得ないアレンジセンスを感じる。オリジナル曲の編曲もハイセンスだ。

オシャレで耳触りが良い。

ペンタトニックスは2年連続で「最優秀インストゥルメンタル/アカペラ・アレンジメント部門」でグラミー賞を受賞した。彼らの音楽が現代のミュージックシーンにおいて有価値だと判断されたことは、アカペラ・ミュージックの価値の再認だと言ってもいいだろう。ペンタトニックスには、これからのアカペラ界を牽引してもらいたい。

常に進化する海外アカペラに注目すべし

1980年代のロッカペラから2010年代のペンタトニックスまで、約30年。アカペラバンドの歴史はまだまだ若い。その短い歴史の中でも、それぞれのアーティストが自分たちらしいスタイルを発掘し、模索し、確立し、進化し続けている。

日本のアカペラ界にはなかなかセンセーショナルな変革が起こらない中、海外のアカペラは日進月歩している。アカペラファンなら、目を離している暇はない。

そして願わくば、日本のアカペラ界にも変革者が爆誕するといいなあ。併せて、実は日本にたくさんいるアカペラバンドが、一つでも多く一花咲かせられる音楽界になればと願ってやまない。

《 雪山 わこ 》
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